ただ、ただ蒼一色。
ぼこぼこ、ぶくぶく、
深く深く、自分を飲み込む音。
それは、
ばくばく、ばくばく、
必死に、生を叫ぶ音と溶ける。
真っ青だった。
けれど今は真っ黒で、そこにぼやりと光が混ざる。
「気が付いたか」
覚えのある声がして、
瞬くと、覚えのある天井。
「あれ?おれ…」
「彼処で寝るなっつってんだろい」
「あ…また落ちた?」
へら、と笑って投げた問いに、答えはない。
けれど、こんな笑顔では誤摩化されてくれなそうな、ぴりと眉間の寄った表情から察するに、正解。
しまったなぁとぼんやり考えて、そのままぼんやり記憶を手繰る。
と、
「あて」
びしりと額を弾かれて、中断。
「…ったく。暫く寝てろ」
思わず額を庇い、そのまま見上げると、
呆れた表情に確かな安堵を溶かして、マルコがほんの少し笑った。
その、瞳の色で思い出す。
「なぁ」
ぽつりと、呟いた声に、逸らされかけた蒼が戻って来て、
おれを捉えて続きを促す。
「おれたち、本当に海に嫌われてんのかな?」
きっと他の奴だったら、どっかおかしくなったか、とか言うんだろう。
だって今更だし。現に、さっき死ぬとこだったんだから。
でもマルコは違う。
きゅ、とまた眉が寄って、
けど、瞳はじっとそのままで、おれの中に言葉の意味を探してるみたいだ。
それを確かめたら、なんだかもう、満足で。
「や、なんでもねェや。おやすみ」
また笑って、もぞりと布団の中で姿勢を変えると、
マルコは片方の眉だけを、すいと綺麗に上げて、それから無造作におれの頭を撫でる。
「変な奴だよい。おやすみ、エース」
それを聴いて、そうしたら自然に頬が間抜けに緩んで、
それからおれは目を閉じた。
睡魔はすぐにやって来て、また、落ちていく。
瞳の中一面、あの蒼に包まれて、
指先ひとつ、唇すこしも動かせないほど、
力は抜けて、奪われて、
息は苦しい、鼓動は五月蝿い。
嫌われてる、なんて、
あんなに、
愛されてる、みたいなのに。
<end>